2006年01月02日

ニース旅行記3〜マティス美術館と旧市街で迷子〜

一日目午後。

連れがホテルにこもってしまったので、私は一人で出かけることにした。

まずはニースの街で行く予定にしていたマティス美術館だ。
この美術館は、ニースの中心地からはちょっと離れた場所にある。
海辺の方ではなく内陸の丘の上にある為、バスに乗っていかなくてはならない。

ホテルのすぐ近くのバス停からは直接行けないので、一度途中で乗り換える必要があった。
バスは海辺を後にしてずんずんと坂を上ってゆく。
駅の周りの猥雑さと違って、このあたりは高級別荘地らしい。
眺めの良い高台に、あまり手は掛かっていないものの庭付きで、少し古びてはいるが小ぶりで優雅な姿の別荘が立ち並ぶ。

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マティス美術館は丘の上にある大きな公園の中にあった。
公園の入り口には、ローマ時代の小ぶりな円形闘技場の遺跡があって、遺跡好きな私はついそちらの方へフラフラと入っていったのだが、どうもマティス美術館と方向が違う様子なので、方向修正。
あちこち迷った挙句にやっと美術館入り口発見。
17世紀に建てられた印象的な赤い外壁のジェノバ風建物に並ぶたくさんの窓はかなりの部分だまし絵でできていて、近くへ寄るとそれと解る。
受付でチケットを買う。
コートダジュールではカルトミュゼという美術館・博物館パスがある。何箇所も回る場合はお得である。
シャガール美術館にも行きたかったので、1日パスのカルトミュゼをください。と言うと、
「この後どこを見に行くの?」と受付のおねえさん。
「シャガール美術館に行こうと思うのだけど」と応えると、何とシャガール美術館は今クローズしているとの事!
ああ残念、シャガールは特別好きな画家ではないのだけど、現地でみるとそれなりの感慨があるのではと期待していたのだ。
しかたなくマティス美術館のみの入館料4ユーロを支払った。

気を取り直してマティス作品を鑑賞。
地下フロアは外観からは想像できない現代的な内装に彫刻作品が並び、学生だろうか、デッサンする若者が行き来していた。
ここは建物の内部の創り自体が少し迷路のようになっていて、気付きにくいところに階段があったりする。
実際これで全部見たんだろうか?と不思議な気分にさせてくれる建物である。

展示作品数は、たぶんそれ程多くはないように感じたのだが、どちらかといえば見慣れた鮮やかな色彩の大作や切り絵のシリーズよりも、素朴なデッサンや、晩年手がけたヴァンスにあるロザリオ礼拝堂の為の模型や修道服、家具などの遺品等、そういった物がとても印象的だった。

マティス美術館を出て公園を少し散歩してみた。
この公園はオリーブ公園とも言われるらしく、とにかくオリーブの大木がどこまでも並んでいる。
どれも年季が入った老木ばかりで、日本でみるひ弱な若木からは想像もつかない幹の迫力である。
その間を子供たちがボール遊びをしながら走り抜ける。
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ぐるっと廻ってマティス美術館までもどり建物の裏手に廻ってみた。
そこに在るのは、ほとんど崩れたローマの街の遺跡。
街も闘技場もこじんまりしていて、大都市ではなかった事が見て取れる。
ローマ時代の人もこの高台にリゾートの街をつくり、コート・ダジュールの明るい空と海を眺めていたのだろうか。
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遺跡を散策しているうちに、結局最初の闘技場へ反対方向から入る事になり、そのまま公園を出てしまった。

さてこれからどうしよう、
シャガール美術館はクローズだというし、どうも中途半端な時間だ。
ニースの中心地へ戻って街の散策でもするか。

どうせなので、行きと違うバスルートで帰ることにした。
行きは割と観光向け直線コースだったのだが、路線図によるともう一つ住宅地をぬけていく曲線コースがあって、ちょっと興味があったのだ。
乗ってみると、確かに住民中心の路線らしく、路線図を握り締めてバス停の名前を一つ一つ確認している私は少し奇異に映っていたかもしれない。
それにしても、このコース、かなりスリリングな路線であった。
住宅地といっても、海辺から高台へと向かう傾斜地なのであって、その段々畑状態の住宅の中の細い道をくねくねと降りてゆくのだ。
それもすごいスピードで。
そのスリル感は、最初はうわーと思ったけど、実はその後郊外へと足をのばした時にはその比ではないことを後々思い知らされることになるのだった。

バスはターミナルまで戻って来た。
とりあえず周辺を歩いてみて、デパートなんかがあるメインストリートに行くつもりだった。

ところが、途中で見つけてしまったのである。
奥にごちゃごちゃと魅力的な小さい店が並ぶわき道を・・・
ちょっと躊躇はしたのだが、結局吸い込まれるようにわき道へと進んでいった。
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私は方向音痴である。日本に居てもかばんに地図は欠かす事はない。
外国の街ではついわき道に入り込んでしまうので、基本的には元来た道を戻るというのをモットーとしている。
今度も、気の済む所まで行ったら大通りまで引き返すつもりであった。

私の進んだその細いわき道は、旧市街と同じと思われる年代物のひなびた建物がそそり立つ中、せいぜい幅3メートル程度かと思われる細い通路が迷路のように入り組んだ場所だった。
その1階部分には、様々なお店が並んでいる。
ハーブやスパイス、プロヴァンス柄の布地、陶器、オリーブ、様々な石鹸、生パスタ、お惣菜、工芸品、八百屋、肉屋、居酒屋、定食屋・・・
観光客向けお土産屋と、住民の食生活をささえているであろう食材屋が混在するなんとも見飽きない通りだった。
買い物心がうずいたが、まだ初日のこと。ぐっと我慢して見るだけにしていくつかの小さい広場をやり過ごし、そろそろ戻らないと引き返せないかという辺りで元来た道を引き返してきた。

その頃私は重大な勘違いをしている事にまだ気がついていなかった。
ニースの街は海に面しているが、海辺には大きな建物が立ち並び、街の中の建物もほとんどが4〜5階建てで視界をさえぎられているので、横に伸びる通りを歩いている限り、どちらが海側なのか目で見て確認する事が出来ないのである。
バスで大通りに到着した時、私はどうやら方向を勘違いしてしまったようなのだ。
先程散策をしたわき道は、てっきり私は山側へ向かっていると思っていた。
だから、元来た道へ戻り、反対側へ抜ければ海辺へ抜けることが出来るはずだった。
その感覚を元に、私はニースの中心の繁華街の方向へ歩き出したつもりであった。

だが、何かが違う。どうもおかしい。昼間バスの乗り換えをしたメインストリートとは似ても似つかぬ風景が通りの先には広がっている。
おまけに道はどんどん狭く、人通りはどんどん少なく、そしてあたりはどんどん暗くなってきた。
通りの名前は地図には出ていない。出ていたのかも知れないが、完全に方向を勘違いしているので見つけることが出来ないのだ。

しょうがない。道を聞くしかない。

私が外国で道を尋ねるときはたいていおばちゃんを選ぶことにしている。
おじさんは、はずれるとあやしい目に会いそうだし、若い人は意外とそっけないからである。
もちろん、選べる程の人が歩いていればの話であるが。

ちょうど車を降りて来たおばちゃんを捕まえて、手に持っている地図を示して聞いてみた。
「今どこに居るのか教えてください」
ところがおばちゃん、身振り手振りとフランス語ですまなそうに、
「ごめんなさい。今老眼鏡を持っていないから地図が読めないの。あなたどこに行きたいの?」(たぶん・・・)
「マセナ広場(ニースの中心で一番大きな広場)の方へ行きたいのだけど」
「じゃあ、この通りをずっと2ブロック程まっすぐ行けば、見えてくるわよ」

要するに来た道の方角へ向かえということなのだ。
ようやくどうやらまったく逆方向へ進んで来た様子だということが何となく解って来た私。
おばちゃんの言う通り、まっすぐ通りを進んでいくと、どうもそこはさっきバスで降りた所の少し先に出る通り。

という事は、結論としてはさっき入り込んでいたわき道はまさしく海辺との間に広がるニースの旧市街の中だったということになる。
何か腑に落ちない感じを持ちつつも、すでに繁華街をひやかして歩くなんていう気分をすっかりそがれてしまった私は、
そのままメインストリートに向かう事を止めて、旧市街の中を突っ切って海辺に出ることにした。
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またまたわき道へ入り込む。あたりはすっかり暗くなり、細い通りは夜の食材を求める人でにぎわっていた。
そのまま進んでいっても、海とは並行線のはずなので、途中適当に左折してみた。
なんだか、人気のない薄暗い通りにぽつぽつとパン屋だったり画家のギャラリーだったり教会だったりが点在する。
ゆっくり寄り道している気分的な余裕はなく、足早に通り過ぎた。どんどん人気は無くなっていく。
道はまっすぐではなく、どうも曲がっていたり斜めになったりしているようで、だんだんとまた方向がわからなくなってくる。

突然広い広場に出た。
暗いし、がらんとしているからよく解らないが、どうもここは今朝食材を仕入れた市場が立っていたサレヤ広場ではないか!
だが、どうも朝どの方向から来たのかがよく解らない。
朝にはあった屋台が全くないのでよく解らないし、今来た道も曲がりくねっていたので、いったいどの道から来たのかさっぱり解らないのだ。
どこにいるのかは判明したが、どの方向へ向かえばよいのかわからない。

やばい、また迷子だ。

しょうがない。今度はおばちゃんとおばあちゃんの二人連れ発見。
地図を見せて、「今ここにいると思うんだけど、合ってます?ここから海に出たいんだけど方向が解らなくて・・・」
二人とも、英語は殆ど理解しないようだったが、「海に出たい」という一言だけはわかってくれた。
「そこの路地を抜けたらすぐ海よ」とおばあちゃん、狭くて暗〜い道を教えてくれた。
こんな所行って大丈夫なんかいな?と半信半疑で路地に入ると、
行く手に見えたのは海!
なんと海からたった1本路地を入った所だったのだ。
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海辺でおじさんが暗い中お仕事・・・いえ、騙し絵です。

は〜やれやれ、やっとすっきりした。
今まで迷子になっていた、建物がそそり立つ入り組んだ旧市街が嘘のように、地平線まで広がる海。明るい街路灯が立ち並んだ海岸線、日が落ちた今でもわかる晴れた空。

さあ、ホテルに帰るか。このまま海辺を歩いていけば15分程で帰り着くはず。

でも、でも、場所も判別できたことだし、もうちょっと、もうちょっとだけ旧市街へ戻ってみることにした。(懲りない・・・)
今度は海が確認できる大通りだけ。
もう既に閉まっているお店の方が多いのだが、まだ空いていたワインショップでプロヴァンスの特産であるロゼワインを買った。
今夜はこのワインを飲みながらのんびりしよう。

時間はすでに7時近くになっていた。ホテルに残して来た連れは心配しているだろうか。
すでに行くのを諦めたニースのメインストリートを横目で見ながら、ワインを抱えてホテルへの道を歩いていった。

ホテルに着いてみると・・・連れは安らかにお休みであった。



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posted by ruru at 17:25| Comment(0) | TrackBack(1) | 旅行記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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