2006年01月03日

ニース旅行記4〜眠れる中世の町アントルヴォー〜

2日目 プロヴァンス鉄道に乗って

今日のテーマは車窓の旅なのである。

ニースから山岳地帯をぬけてディーニュ・レ・バンへ抜けるルートを走るプロヴァンス鉄道。
この鉄道は100年以上の歴史がある鉄道だそうだ。
コート・ダジュールとういうと誰もが紺碧の海を想像するが、この鉄道は海辺の街であるニースを出て奥地へ、奥地へと険しい山岳地帯を進んでゆく。
ニースからディーニュ・レ・バンまで約3時間。一日4往復のみのローカル線である。

朝9時発に乗るべく、バスでプロヴァンス鉄道駅に向かう。国鉄の駅とは少し離れた所にある駅は、もうそこからローカルの雰囲気が漂う。
チケットはただのレシート。ホームでちんまりと出発を待っている電車は2両編成。
駅を出た電車は住宅地の間をぬって走ってゆく。東京の世田谷線みたいだ。

だが20分程もするともう山の中を走るようになり、すぐに山岳列車らしい風景が広がってくる。
連なる山々の上の方に、時折教会の塔とその周りの本当に小さな村が見えたりする。
あんな所にも人が住む村があるんだ・・・

電車はどんどん山道を登ってゆき、だんだんと辺りは霧に包まれ、その霧の中にぼうっと浮かび上がる川に沿って進んでゆく。
写真ではよく解らないけど、なんとも幻想的な風景だった。
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今日の目的地はニースから1時間半ほどのアントルヴォー。
ガイドブックによると、そこには岩山のふもとに要塞都市としての中世の町が残されているという。
アントルヴォーへ着く頃には霧は晴れて、また蒼い蒼い空に紅葉した木々が美しい秋の風景になっていた。
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なんともかわいらしいアントルヴォーの駅

駅を降りたのはどうやら私達だけのようだ。
切り立った岩山の頂上に砦のような物があり、その麓を流れる渓谷の間に城壁に囲われた小さい街がある。
別の方角へ目をむけると、そこもまた切り立った岩山。
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ここは裏手を岩山、前を川に挟まれた自然の要塞なのだ。
ローマ時代の昔からここには町があった。
最初は川の外側にあった町を中世には外敵から身を守るために場所を川の内側に移動して要塞としていったのだが、17世紀にVaubanという城塞の専門家が手を加えて今の形になったという。
城壁に囲われ、建物が密集する下界の町のはるか上方に見上げる城塞。
麓にある町に万が一進入された場合でも、山の上にある城塞へ移り篭城出来るようになっている。
これだけの堅固な要塞がここにあるという事は、長い歴史の中でここは度重なる戦いを経験してきた土地だということだ。
古くはたぶんローマ軍の駐屯地だったのだろう。
川にかかる橋を渡って17世紀の城門を入ると、そこは中世のまま忘れられていたようなひっそりとした町並みだった。

どうも様子からして食事が出来る所などありそうでは無かったので、いったん駅の近くまで引き返してサンドイッチで腹ごしらえをすることになった。
連れはアメリカンと頼んでも濃い目で出てくるコーヒーがお気に召さないらしくブツブツ言っているが、サンドイッチは気に入ったらしい。

腹ごしらえも済ませ、改めてアントルヴォーの城門をくぐる。
見取り図を見る限り、30分もあればぐるりと一回りできそうな大きさの町だ。
まずはわき道をパスしてメインの大広場と思われる場所へ。
町の建物はやはり殆どが4階建て程度で、岩山の麓に身を寄せ合うように群立している。
何箇所か点在する泉と、その周りに伸びる何本もの入り組んだ細いわき道があり、どれも階段だったり坂道だったりで、上下左右の迷路のようである。
方向音痴の私も、さすがにここは迷子になってもたかが知れているので、あまり深く考えずに散策することにした。
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しかしここは本当に観光地なのだろうか?人は住んでいるのだろうか?
広場に居たのは地元民とみられるおじさんが1人。通路で出合ったのは壁の修理をしているとみられる男性と荷物を運んでいる男性が一人。
その他はどの道を行っても、どこまで行ってもだあれもいない。
ただただひっそりと、眠ったようにそこに存在しているようだ。
建物がそそり立っているので足元に日が差す事は無いが、空を見上げるとそこには変わらずに青い空がある。
だれもいない細い道をあちらこちらとさ迷ううちにだんだん楽しくなってきた。
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足元の石畳、階段、石積みの壁、かすれた壁の漆喰、すでに廃墟になった建物、家のドア、時折出くわす泉・・・
目にするもの全てが、何かの記憶を大事に抱え込んだまま沈黙し、物思いに沈んでいるようだ。

人が居ないという事が、かえって過去そこで繰り広げられたであろう生活が想像できるような気がした。
この小道を行くと先には何があるのだろう?だんだんとわき道と見れば入ってみないと気がすまなくなってきた。
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だが坂道や階段ばかりの小道散策は連れにはつらい。
ついに、連れを泉の脇に座らせて私はバタバタと町の中を走り回った。
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夏であればここはたぶんレストラン???

方向が解らなくなってもグルグルしているうちに、連れの待つ泉の所にいきなり出たりする。
「なんで右の道に入っていったのに左の方から戻ってくるの?」
私だってわかんないよ。

本当は山の上にある城塞に登ってみたかった。
駅からは良く見えたその城塞は切り立った岩山を一時間程登ったところにある。そこから見る景色は絶景だそうだ。
今回は時間も連れの体力も足りないので、やむなく断念。
もう少し町の空気を味わいたかったが、そろそろ帰りの電車の時間が迫って来た。
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町の城門をくぐり、戦いの記憶を封印して眠りについた静かな町を後にした。



アントルヴォーEntrevauxのHP(フランス語)
posted by ruru at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅行記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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