2006年01月08日

ニース旅行記7〜自然のなかで現代美術鑑賞〜

3日目 サン・ポールのマーグ財団美術館

今日のテーマは長距離バスでの旅である。

コート・ダジュールには、「鷹の巣村」と呼ばれる小さい村が無数に点在する。
その昔、サラセン人の襲撃から逃れる為に海辺から見えにくい山間の丘の上に村を作ったのが始まりで、大体が岩山のてっぺんに民家が寄り添うように集まっている為に、鷹の巣のように見えるというのが呼び名の由来だ。
村の中は中世のたたずまいが残る細い通りが迷路のように入り組み、一方村の城壁からは辺りの山や地中海が一望に見渡せる絶景の場所なのだ。

最近、ニース近郊で鷹の巣村というと、雑誌等でエズ村がよくとりあげられているのだが、今日向かっているのはサン・ポールという村である。
サン・ポールもエズと同じように観光地として人気の村らしい。
サン・ポールの特徴としては、昔から芸術家や工芸家のアトリエが多いことで、モディリアニ、ボナール他、ピカソやミロ、マティス、シャガールなども訪れていた場所なのだ。
イブ・モンタンが結婚式を挙げた場所でもあるらしい。

サン・ポールは海辺から内陸の山の方にかなり入り込んだ電車の通っていない場所にある為、ニースから長距離バスに乗っていかなくてはならない。
ニースの長距離バスのターミナルを出たサン・ポール行きのバスが、調度ホテルの前の通りのバス停を通っていくのは確認済み。
多分9時15分頃にそこを通るであろうバスを待ち構える為に、9時過ぎにホテルをでる。

ニースではバスに乗るときには、自分の乗るバスは自分で捕まえる覚悟で待っていないと乗り損ねることがある。
長距離バスは特に途中のバス停で乗る人が少ないので、運転手に気付いてもらえるよう「私このバスに乗ります!」という意思表示をしない限り乗る人がいないと見なされて通過していってしまうのだ。(スピードも落とさないのはどういうことだ?)
だからタクシーを呼び止めるような感覚で、尚且つバスの番号&行き先を見落とさないように目をこらして、バス停に仁王立ちしている私達。

やって来たバスの運転手さんは女性であった。細身ながらたくましそうで、でもやさしくあかるい笑顔でチケットをきってくれた。
バスはしばらく海辺を進み、それからどんどん内陸へと入っていく。
この地方はどこもそうみたいだけど、海辺の幹線道路から内陸部へ入ると途端に道が狭くなる。
山あいの道にさしかかると、さらに曲がりくねった細い道ばかりになってくる。そんなところを図体のデカイ長距離バスが走るのだ。
だが、運転手はたとえ街中の入り組んだロータリーだろうが山の中の急カーブの坂道だろうがスピードを落とすことなくガンガン飛ばしていく。
対向車線の車とのすれ違いの幅がたとえ10センチ程度しかなくてもである。

私達はシートに座っていながらだんだんと手すりにつかんだ手に力が入って来た。
逞しい女性運転手さんは、ラジオを聴きながらふんふんと鼻歌を歌い、びゅんびゅんと飛ばしていく。

1時間程ビクビクしたバスの旅は終わりサン・ポールの村の入り口に到着した。

ここで私が一番楽しみにしていたのは、実はサン・ポールの鷹の巣村ではない。
鷹の巣村から少し離れた所にあるマーグ財団美術館が一番の目的なのだ。
まずは第一目的である美術館を見て、それから村でお昼を食べるということにして美術館への道を歩き始めた。

美術館は村の入り口から、坂を1Km程上った丘の上にある。
バスがある訳でも無いので、連れにはどうしても歩いて上ってもらわなくてはならない。
まだ午前中なのですがすがしく、車の通らない山道は上り坂だけども途中かわいい家があったり見慣れない雑草があったり。
「ボンジュール!」
連れは通りがかりの地元の人に声をかけると皆にっこりと返事を返してくれるので、ご機嫌だ。

本当にこの道でいいのかな、と思い始めた頃、坂の上に美術館の入り口らしきものが見えてきた。
一人11ユーロという、日本の美術館の企画展並みの入館料を支払いゲートから敷地内へ。

入ったとたんに目の前に広がる前庭には、ミロをはじめとする現代美術彫刻が緑の林の中にたくさん配置されていて、館内に入る前から期待値がうなぎのぼり。

この美術館は現代美術を代表する多くの芸術家達と親交のあったマーグ夫妻中心となって設立された財団であり、自然と現代美術の融合を理想とするこの美術館には沢山の芸術家が設立に参加している。
珍しくも独立運営の美術館なのだ。入館料が高いのは理解できる。

入り口を入ってまず目に入るのは中庭にたたずむジャコメッティの彫刻。
私はここに来たのはこのジャコメッティが見たかったからといっても過言ではない。
美術館のガラスケースの中ではなく、青空の下で風に吹かれて今にも歩き出しそうな人。
人とはいっても、そこには肉感的なものは感じられず、極限までにそぎ落とされた人の形をした彫刻。
ざらざらした岩のような表面と、細く細く棒のように伸びる手足、小さい小さい頭
でもなぜだろう、こんなに細く長く創られていてもジャコメッティの創る人には、豊かな表情とリアリティが感じられる。
決して、痩せこけたまがまがしいものではなく、暖かさが感じられる。
nice31.JPG
nice32.JPG

「私は見えるものを見たままに表現したい」
ジャコメッティはパリのモンパルナスのカフェで道行く人を眺め続け、それを彼が見たままに表現したらしい。

彼が見た人や動物達・・・作品には、彼がそれらに注いだ愛情が感じられるような気がする。

中庭を一通り眺めた後、屋内のジャコメッティの部屋でデッサンや彫刻の小品を鑑賞。

部屋を進むと、ブラックの部屋、ミロの部屋、シャガールの部屋、カルダーの部屋・・・・・
挙げているときりが無いほどの現代美術の巨匠の作品群。
超有名な作品はないものの、現代美術好き人間がここに来たら狂喜すること間違いなしだ。
nice34.JPG
私シャガール美術館に行きそびれたので、ここでシャガールが見れたのはうれしかった。
やっぱりシャガールは日本で見たときと少し印象が違っていた。
たぶんここに集められているのが、南仏に滞在していた時の作品達だからというのもあると思う。
3日程しかまだ滞在していないとはいえ、実際にこの土地を歩き、光を感じ、町の建物を目にした後でシャガールの作品を見ると、
何となくあぁそうか、と感じるものがあったのである。
これは気取ったふわふわしたものではなく、とっても素朴で地べたに近いものだったのだな。(意味不明?すみません)
それと同時に、これを日本の家にかざってもやっぱりヘンだよなーとも思ったのだが。 

大きなシャガールの絵の前では、小学生達が床にに座り込んでお絵かき中だ。
nice33.JPG

以外と館内は広く、思っていたよりもはるかに膨大な美術コレクションだということがだんだんと解って来た。
途中でもう一度中庭へ出てジャコメッティを眺めて、裏庭にあるミロの迷路と呼ばれるエリアへと進む。
マーグ夫妻は特にミロと親しかったらしく、ミロの作品は館内、屋外共に充実している。
迷路というのは名ばかりなのだが、道の途中あちこちにミロの彫刻がデーンと構えていたりヒョッコリと顔を出したり。
ミロの彫刻を見ていたら、岡本太郎を思い出してきた。彼の作品も屋外が似合う。
nice36.JPG
nice35.JPG

nice38.JPG

もう一度屋内に戻り、まだ残っている展示室を見て、さらにもう一周。今度は逆周りに見納めを。
最後にミュージアムショップで絵葉書とカタログを記念に購入。英語版がなかったのが残念だった。
nice37.JPG

ああ、楽しかった。本当に来てよかった。
気分はお腹いっぱい。満足満足。

でも実際のお腹はだんだんと文句を言い始めていた。
さあ、サン・ポールの村にごはんを食べに行こう。



マーグ財団美術館→(フランス語)

posted by ruru at 23:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 旅行記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
心洗われるような一日ですね。

>シャガールは日本で見たときと少し印象が違っていた
デ・キリコもそうでした。ローマで見ると自然なんです。風土に合っているというか。
環境って重要な要素なんですね。
Posted by emily_711 at 2006年01月10日 01:30
>環境って重要な要素なんですね。
その絵が描かれる為にも必要だし、鑑賞する為にも必要な要素だって事を実感しました。

いいなぁ私もローマでデ・キリコがみたい!
Posted by ruru at 2006年01月10日 10:56
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/11474503

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。