2005年10月03日

「ジギー・スターダスト」 David Bowie

B0009OAUCUジギー・スターダスト
デヴィッド・ボウイ




このアルバムについてはあまりに多くが語られている。

ロック・オペラとも言うべきコンセプトアルバムであり、このアルバムで語られた物語をビジュアルイメージとしたボウイのパフォーマンスは70年代前半の音楽シーンの一時代として今でも記憶される。

そういう私は、リアルタイムではこのパフォーマンスを見ていない。
私が彼を知ったのは70年代も終わりに差し掛かった頃で、彼の作品の演劇性はMTVで流れていたミュージッククリップから感じ取るのみだった。

このアルバムを通しで聞いたのは、つい先月の事だ。
私はロックアルバムに、こういうアルバムを通して語られる物語があるのを知らなかった。
1曲目から引き込まれ、最後まで聞かないと落ち着かない。


このアルバムで彼が語る物語もそうなのだが、彼の歌の説得力、これが何か尋常でない感じがする。
この頃のボウイの声は、どちらかといえば、儚く不安定で、壊れてしまいそうな繊細な響きを持っている。
70年代後半〜80年代における、深くて渋い歌声とは全く違う。
歌が旨いかと言えばは正直言って違うかもしれない。
ただ、心に響いてくる、共鳴すると言って良いかもしれない。

今年の始め頃、同じような事をブログに書いていた記憶がある。
「オペラ座の怪人」の映画を観た時に、ファントムの歌に関して感じた事だ。
ジェラルド・バトラーの歌は、旨くは無いが心に響く、と。
彼の起用に際して、ロイド=ウェバーが、ロックンロールテイストの気質を持った俳優が必要だった、という表現をしていたことを思い出した。
ロイド=ウェバーもまた、ロック・オペラというジャンルで音楽シーンに登場した人だ。
これに関してはまた後でふれるとして。

このアルバムの語るストーリーを。

1曲目「Five years」
マーケット・スクエアを通り抜けると
大勢の母親たちがため息をついていた
ついにその知らせはやってきた
「我々にはあと5年しか残されていない もう泣くことしかない」
知らせに来た男は泣きながら伝えた
「地球はもうすっかり死んでいる」と

僕は聴いた 電話 オペラハウス 大好きなメロディ
僕は眺めた 少年 オモチャ アイロン テレビ

精一杯の物を頭に詰め込み 溜め込んだ
太った人も 痩せた人も のっぽもちびも 名も亡き人も有名人も全員
僕はそんなにたくさんの人が必要だと思った事は無い

あと5年しかないと宣言された時、世界が今までと違った目で見えてくる
曲はドラムとピアノのみで始まるが、だんだんと高まるストリングスの中、ギターに合わせて
ボウイは叫ぶように歌う
我々には5年間しかない 目に焼きついて離れない
我々には5年間しかない なんていう驚きだ
我々には5年間しかない 僕の頭はいかれてる
我々には5年間しかない 残されたのはそれだけだ

2曲目「Soul Love 」を経て3曲目の
「Moonage Daydream(月世界の白昼夢)」ではついにジギーは宇宙から降臨する。

僕はスペース・インベーダー
ロックン・ロール野郎になるんだ 君のために

飛んでいくんだ 月時代の白昼夢の中へ

4曲目は「Starman」

スターマンだ 彼が空で待っている
僕らに会いに来たがっている
けれど彼は僕らの心を狂わせてしまいそうだと思っている

彼は僕らの心を吹き飛ばさないと言った 心が大切だと知っていたから
彼は言った
「子供達の心を熱狂させよう
 子供達に心を使わせよう
 子供達みんなに ブギーさせよう」

誰かに電話しなきゃならなかった だから君を選んだよ
君も聞いただろう テレビをつけてごらん 彼が2チャンネルに出てる
窓の外を見てごらん 彼の光が見える
パパには内緒さ 
驚いて 僕達を閉じ込めてしまうから

スターマン 彼が空で待っている・・・

そうして地上に降り立ったジギーは絶頂に登りつめ、バンドを率いて
ロックンロールスターとして人々を熱狂させていく
バンドの名前は「Spiders from Mars」火星から来た蜘蛛達
曲も「It Ain't Easy」「Lady Stardust」「Star」「Hang On Yourself」と、どんどん熱狂の渦と化して行く。

そしてついにジギーとしてのボウイを代表する曲「Ziggy Stardust」が登場する
登りつめたスターはエゴが頂点に達し、ファンから反感を買った結果、バンドが解散していく様を唄う。
バンドのメンバーが彼をねたんだ結果彼を破滅させたとも受け取れる

ジギーはエゴを愛し
自分の心に引き込まれていった
ハンセン病になった救世主のように
子供達がその男を殺した時 僕はバンドを解散させた

「Suffragette City」を経て
アルバム最後を締めくくる曲「Rock'n' Roll Suicide」(ロックン・ロールの自殺者)
彼は静かに歌い始める

失うには年をとりすぎ その運命を背負うには若すぎる
あなたはロックンロールの自殺者

後半、この曲は劇的な展開を見せる
君はひとりじゃない 僕のほうを向いておくれ
君はひとりじゃない 生きるんだ
君はひとりじゃない 両手を差しだしてくれ
君は素晴らしい   手を出してくれ


このフレーズに救われた若者がどれだけいたのだろう・・・


さて、このジギーというキャラクター、ボウイがこれを作り上げる題材はいくつもあったようだが、その中のひとつに、ヴィンス・テイラーという歌手がいた。
彼はライブの最中に、自分は救世主イエスだと言い出し精神に異常をきたしていったらしい。

そんな情報を読みながら、私は思った。

ジギースターダストの盛衰の物語って、ジーザスクライストスーパースターにとってもよく似てる・・・

新しい風を吹き込み、救いを望んだ民衆からスーパースターとして祭り上げられ、結局彼を理解しない民衆達や弟子達から見放されて追放される、そのくせその場を離れることが出来ない民衆と弟子達
最後の「君はひとりじゃない」という歌詞はその場のイエスと弟子達の葛藤の中での心の対話のようだ。

もしかしたら、デヴィッド・ボウイもロイド=ウェバーも、同じような世界を違うアプローチで描いていたのかもしれない。
同じロックという音楽を使って。
ジーザス〜の中でユダは歌う「違う時代だったら・・・」
ある時代だったら彼はジギースターダストと名乗っていたのかもしれない。

そういえばデヴィッド・ボウイは「最後の誘惑」というキリストを題材とした映画で、ピラトの役を演じている。
何か印象的だ。

70年代前半という時代を私はよく知らない。想像するのみだ。
だが、この時代の若者が欲していたか抱いていた世界・イメージを彼らはある形にして差し出して見せたのではないだろうか?
そんな感じがした。








posted by ruru at 03:44| Comment(4) | TrackBack(0) | デヴィッド・ボウイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
またまたお邪魔いたします。
「スターマン」ってデビッド・ボウイだったんですね。今アマゾンUKで駆け足で足跡をたどってきました。私はなんと言われようとModern Loveなのですが、全盛期のパワーと情熱、葛藤がサウンドに感じられないことは否めません。

ボウイの声、時にはエルビス・プレスリーのように甘く低く、時には乾いた砂漠の空のように高く、アスファルトのようにざらついた感のある不思議な声だと思っていたのですが、若い頃はもっと高く細い声だったのですね。

ロックが単に叫ぶだけのうるさい音楽ではないことは、青春から遠ざかった今の方が分かるような気がします。「ジーザス…」や「ファントム」、そして「ジギー」がたどったような行程を経て、ふと振り返った時、その姿がやっと見えるのだと思います。

「ソフィーの世界」に「19世紀、30代以上のロマンチストはいなかった。ある者は自殺し、ある者は保守派に転向し、ロマンチストではなくなっていった。」とのくだりがあります。
「青春の暴走と喪失」は誰もが通る、普遍的なテーマなのかもしれません。
それを形にして残すことが出来るのが、芸術家ですね。
Posted by emily_711 at 2005年10月03日 17:21
「Modern Love」
これ、以前感じていたのともしかしたら違う意味合いを持った曲なのかも、と思い始めたところです。これについてはまた別の記事でお付き合いいただくかも・・・

ボウイの声は彼がその時に取っていた音楽のスタイルや曲によって、コロコロと七色に変化します。
その曲に一番合った声を自ら創りだしているのでしょう。器用な人です。

>ロックが単に叫ぶだけのうるさい音楽ではないことは、青春から遠ざかった今の方が分かる
同感です。

ブリティッシュロックの、あのよい意味で屈折した情緒的な世界が今になってその感覚に共感すると同時に、それを昔から変わらず創り出していた彼らに尊敬の念を抱きます。
Posted by ruru at 2005年10月03日 21:55
>「Modern Love」
>これ、以前感じていたのともしかしたら違う意味合いを持った曲なのかも
ええ?何々、興味深々とちょっと探して読んでみたら、ホント意味深ですね。
しかも"Get me to the Church on Time"ってMy Fair Ladyじゃないですか!(上手いな〜)

ruruさんの解釈楽しみです♪
Posted by emily_711 at 2005年10月04日 00:32
アルバム「Let's dance」の曲は、以前の彼の曲とは違うような言い方がよくされているけど、ちゃんと聞いてみるとやっぱり彼らしい曲でした。

そのうちUPしますね。
Posted by ruru at 2005年10月05日 03:09
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。