2005年10月19日

「シャイニング」キューブリック監督の映画って・・・

映画は数々あれど、なんだかいや〜な感じを受けつつもついつい惹きつけられる様に何度も観てしまう映画っていうのがある。
スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」がそうだ。

シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン
ジャック・ニコルソン スティーヴン・キング スタンリー・キューブリック
B0007Z9Y0U


雪に閉ざされたロッキー山上の大ホテルに、管理人としてやって来た小説家とその家族。
しかしそのホテルには、前任者が家族を惨殺し、自殺するという呪われた過去があった。
狂気の世界に取りつかれていく小説家と、不安に慄く妻、そして幻視能力を持つ息子
外界から遮断され、緊張に満ちた三人だけの世界・・・
スティーブン・キングの原作を映画化したものだ。

狂気のホテルに感化されて正気を失ってゆく作家を演じたジャック・ニコルソン(主人公の名前もジャック)の怪演が話題になった映画だが、
実際に観ていると、一番怖いのは恐怖におののく奥さんの表情だったりする。
映画の一番の要であり、鍵と深みのある演技をしているのは息子のダニー。

ひたひたと忍び寄る不安と恐怖、不気味な雰囲気、広いホテルの中で家族三人だけだという孤独、
広い誰もいないホテルの中で、絆を深めるどころか家族といえどもお互い理解できない世界、存在。
家族としての絆と愛情は狂気の内に打ち砕かれ、最後に残るのは母と子の本能でのつながりのみ。
彼女と息子さえ、実際には母子であるということ意外に理解し合う事は無いのではないかと思われる希薄さ。
一番確かな物に見えるのが、何か不安な予感を感じ、彼らを心配してホテルにやってくる黒人の料理人なのだが、ジャックの斧の犠牲になってしまう。

息子が幻視で見てしまう惨殺された双児の少女の亡霊、エレベーターからあふれ出る血の洪水・・・
できれば見たくない、目をそむけたくなる内容にも関わらず観てしまうのは、キューブリックの映像の魅力だ。

この人の撮る映画はセリフが少ないものが多い。
画(え=映像)がそれ以上に語っているから。
セリフで理解する以上に、映像から受ける印象こそが、作品を物語る。
目で見た映像というよりも、心に映る映像を見せられているような気がする。
そして、残酷であってもただ汚いだけのスプラッタームービーとは格が違う、ある種の美しさがある。
絵画を鑑賞する時と同じような感覚を覚える。

「2001年宇宙の旅」でもそうだった。
こちらはSFだが、スターウォーズのような冒険活劇を期待すると見事にがっかりするはずだ。
セリフは殆ど無く、提示される謎は解決される事は無く、哲学的な印象と疑問が、未来的なビジョンと共に心に留まり続ける・・・
B0007Z9YAK2001年宇宙の旅
キア・デュリア アーサー・C・クラーク スタンリー・キューブリック


音楽の使い方も絶妙だ。
音楽でもって感情を高めるようなメロドラマ的な使い方はしない。音がないことすら音楽の効果である。
実は「シャイニング」の音楽は殆ど印象に残っていないのだが、「2001年宇宙の旅」で使われたシュトラウスは有名だ。
でも音楽の使い方で衝撃を受けたのは「時計仕掛けのオレンジ」の方。
映画としては強烈すぎ、刺激と灰汁が強すぎてさすがの私も好きとはいえない。
だが、ベートーベンの「第九」のエレクトリックアレンジはやっぱりクールだと思う。
(そういえば、ジギー時代のボウイはこれをライブのプロローグに使ってた。彼もキューブリックに影響された一人・・・)
B0007Z9Y3W時計じかけのオレンジ
マルコム・マクドウェル アンソニー・バージェス スタンリー・キューブリック


スピルバークも彼を敬愛した一人。キューブリックの死後、彼へのオマージュとして「A・I」を撮ったのは周知のとおりだが、やっぱり観てみるとこれはとってもスピルバーグ的だ。
キューブリックの手法を一部取り入れてはいるがアプローチの仕方がやっぱり違う。

どんどん話はそれるが、キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」に対するものとして、ロシアのタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」がある。
惑星ソラリス
惑星ソラリス

「2001年〜」と同じく映像が特徴の難解な映画。
これもまた私にとって子供の時に観て以来どうしても忘れられない映画だ。ストーリーの方はスタニフワフ・レムの原作の方で覚えているが、映画の映像がフラッシュバックのように時折頭によぎる。やはり美しく、不安に満ちた映像だ。
今はレンタルでも見つからず、TVでも放映されないしDVD版は買うには画質に不安が残るので躊躇するしで、いつかもう一度みたい映画の一つ。
たしか冒頭のシーンで近未来の地球の映像として、日本の高速道路が出てくるというオチがあった。
その頃は日本の高速も近未来的に見えたのか・・・

数年前にスダーバーグ監督がジョージ・クルーニーを主演に「ソラリス」としてリメイクしたので観に言ってみたが、こちらはすっかりラブストーリーになってしまっていて、全く別物という印象だった。

ちょっと話を「シャイニング」に戻して原作のスティーブン・キングについて。

この人、ホラー小説の権威ではあるが、実のところ本人はひどい怖がりだそうだ。
本人が語ったインタビューを聴いたことがあるのだが、彼の原点は子供の時におしおきで地下室に閉じ込められた時の恐怖だそうで、
一人で小説を執筆していると後ろを振り返るのがとても怖いらしい。
その恐怖からどんどん妄想が広がり、さらに怖い話を書く事になるという、なんだか笑っていいんだか悪いんだかよくわからない話である。

不思議なのは、彼のホラー小説のテレビドラマや映画がかなり沢山あるにもかかわらずあまりにも駄作が多いこと。
成功作は「キャリー」「シャイニング」「ミザリー」くらい。
一方、ホラー以外では数が少なくとも秀作ぞろい。
「スタンドバイミー」「グリーンマイル」「ショーシャンクの空に」

ちなみに、スティーブン・キングはキューブリックの「シャイニング」がお気に召さなかったらしく、自ら別バージョンを撮ったらしいが、こちらはほどんど話題にならない。
シャイニング TV版
シャイニング TV版




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posted by ruru at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画いろいろ... | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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